人材業界経験者が転職に関して思うこと

企業側の採用を支援する立場として、キャリアについて考える機会は多く。
 
今回は「転職を考える際のポイント」をご紹介します。
 
「業務がマンネリ化してきていまいち成長実感を感じられずモヤモヤしている人」「今の職場は自分に合っておらずもっといい環境があるはずだと思っている人」など転職が頭にちらついている人にはぜひ読んでいただきたい内容となっております。
 
転職サービスビズリーチの経営陣であった竹内 真さんのお言葉の引用です。
 
転職を考える一人一人に対しての"愛情"が伝わってくる本質的メッセージだと感じます。
 
転職を考える全ての後輩に捧ぐ(長文)

 

オープンに語ることの無かった話をしたいと思います。特に僕が経営している、していた会社に入社してくれた社員。その中でもエンジニアのみんなに向けて、でも別の職能の人にも向けて書きたいと思います。
今年の2月から、ビズリーチ社はビジョナルというホールディングス体制に移行して、僕はホールディングス側の専任取締役となっています。執行を持たない経営業が本業ですが、これは簡単に言えば、今まで部下だったみんなのマネジメントや評価、異動、キャリア相談に乗ることなどを放棄したことでもあります。その代わりに冷徹な経営判断を下せるようになるというメリットと、権限と部下を有さない純粋取締役として、説明と納得を持って会社や事業を動かさないといけないという、難易度の高い業務への挑戦とも言えます。
当然ですが、僕にも執着心があります。特に大切な部下や後輩に対しては並々ならぬ想いがあります。ではなぜ、その想いがあるにも関わらず、執行を放棄するのか?それは「強い経営のトップ」を生み出す会社になるため、その一点になります。
経営のトップを生み出す。言い方を変えると後輩にその場を譲るということは、結果的に「大失敗」をさせるということと近いように思っています。そういう前提で、結果、数字的な失敗から、マネジメント失敗による組織崩壊など、何かしら失敗させて、自力で自分のケツを拭くという一連の痛みを経験しなければならないと思っています。簡単に言えば、きっと残してきた後輩たちは「前の方が良かった」とか「夢のない組織になった」とか、思いながら転職するのだろうな、なんて思ったりします。いやなに、託した新しいマネジメントチームを信頼していない訳ではありません。自分自身がそれくらい、誰よりもそれぞれの人生を考えてマネジメントしてきたという、自負、自信、誇りがあるからです。逆に全員が「今の方がいい!」と思ったなら、そりゃ組織的には最高なので、何ら文句はありません。要するに、残してきた後輩には、きっと嫌な想いをさせるだろうなと思いながら、僕自身は今の場所を務める決心をした訳です。
だから、この会社を辞めて転職しよう!と思うことは大いに結構。その事実を、新しいマネジメントチームに突きつけてやって欲しい。それは所謂不信任決議に対する一票でもある。これに対してマネジメントチームが「あいつは結局根性がなかった」と言うならば、今後、もっときっと痛い思いをするだけだし、もし、君の一票で痛々しい思いをするならば、それは我々の会社にとって必要な痛みだったのだと思う。みんなに、痛みを与えてしまってすまない。しかし、そうしなければ我々の会社が10年後、世界に冠するトップカンパニーにはなれないと思っている。そんな夢を持ってしまっていて、すまない。
全ての後輩に、そんな痛みを与え、転職を考える日が来るかもしれない。いつも僕はそう思っています。
さて、本題はここからだ。
僕がマネジメントしていない組織をつまらなく感じるなら、それは仕方がない(自負)。転職を考えるのも仕方がない。しかし、ひとつだけ約束してほしい。君の未来を輝かせる、最高の選択をして欲しい。そのために必要なことは以下の3つだ。
・十分な量の会社を見たか?
・本当に欲しいものは手に入るのか?
・人に、義理と人情、徳はあるのか?
【十分な量の会社を見たか?】
そもそも誘われた会社に行くべきではない。いや、正確に言うと、可能性ある全ての会社を見尽くしてなお、その会社が最高かどうかを問うべきである。なに、
高野 秀敏
さんとか、
志水 雄一郎
さんにでも相談してみなさい。ある程度出揃うはずだし、他に相談しても良いと思う。ビズリーチ社の人間はビズリーチ使えないだろうけど、最悪上司に断って使うのもアリだと思うよ。我々は、外の世界を見たとしても、それでも我々の会社が最高であると思われるように頑張るだけであって、外の世界を見ることを制限することは両者にとってプラスにはならないと思う。とにかく、包み隠さず全部を相談して、沢山の会社を見て、面接を受けたほうが良い。40年働くとして、5年を無駄にしたら、人生の12.5%と老後を無駄にするんだぜ。絶対に沢山の会社を見て決めなさい。
【本当に欲しいものは手に入るのか?】
キャリア、給与、SO、権力、看板。。。本質的に欲しいものの中でも、あまり人に言えないものも沢山ある。本当に欲しいものは何なのか?ちゃんと考えて、ちゃんとそれに準じて探した方が良い。もしかしたら、それは現職でも手に入るのかもしれない。なぜ手に入っていないのか?それはあなたがはっきり言葉にして伝えていないからだと思う。隠しながらかすめとる生き方は、結局何も手に入らない可能性が高い。恥ずかしくても、伝えよう。必ず今までより最短距離を歩めるはず。200人にひとりくらいかなー、給与交渉してくる人。いくらいくらください、さすればこれこれこう結果出します!みたいな。貰えるものを貰おうとしているように見えて、自らでハードルを課しているんだよね。こういうの、結構好きな経営者も多いです。
【義理、人情、徳はあるのか?】
最も大切なこと。転職する先の会社の人は義理と人情、徳はあるか?昨今のベンチャー企業には、凄まじいリスクマネーが飛び込んで来ている。みんなの知らないところで、信頼に対する取引が常に行われている。投資を引き揚げる話なんて、実はザラにあるけど、資金調達のニュースしか流れない。人の信頼や真価は「悪い時にこそわかる」ものである。よくある話だけども、この世界では人を引き抜いたり抜かれたりすることもある。その時、あんまりだと経営者同士で「ちょいちょい」なんて話をしたりもするのだけど、大体のケースで「少しやり過ぎてしまってすみません」みたいな話でまとまったりする。しかし、僕の経験の中では一社だけ、こういう耳の痛い話をした時に返事すら無くなった会社があって。一例ではあるのだけど、耳の痛いとき、悪いことをした時、とりあえずでも謝ったり、話もできない経営者と出会うと「ああ、この経営者は会社が傾いたら投資家に嘘ついたり、放り投げていなくなったりするのかな?」なんて思ってしまう。さすがに、そんな会社に、もしも成功しようが失敗しようが行って欲しくないというのは親心のようなもので。少なくとも外の投資家や経営者に、大きな信頼のある経営者のいる会社に転職して欲しいというのは、常々思っている。
決心したものを、わざわざ相手方を貶めてなびかせるなんてことしたくないから、個別で1on1しても、こんなこと言わないけれど、みんなの転職に、実は一喜一憂しています。悔しいけど、一度転職した方が君のためだな、と思うことも何度もあったし、その後戻ってきてくれたりすることもあったりして嬉しかったり。もちろん、失敗したらいつでも、すぐにでも帰っておいでと、辞める前に話せた人には伝えているし、伝えられなかったとしてもそう思っている。
多分ね、ほとんど世の中の経営者は、同じようなこと思っていると思うんだ。ひとりの経営者として、命の一部を預かるつもりで入社してもらった全ての人に。本音で、愛を込めて。